始まりの物語

 たとえば、テーブルの上にリンゴが置いてあったとして。  このリンゴが、『間違いなくリンゴである』ということを証明するために、あなたならどうしますか?  ――目で見てみる。  確かにリンゴが置いてあるように見えますね。  けど、ひょっとしたら立体映像かもしれませんよ。  ――手で取ってみる。  さわり心地や質感もリンゴそのものです。  けど、よく出来たフィギュアかもしれません。  ――匂いを嗅い...

始まりの物語 - 今日も生きてる

2003/10/27UP

 たとえば、テーブルの上にリンゴが置いてあったとして。
 このリンゴが、『間違いなくリンゴである』ということを証明するために、あなたならどうしますか?

 ――目で見てみる。
 確かにリンゴが置いてあるように見えますね。 けど、ひょっとしたら立体映像かもしれませんよ。

 ――手で取ってみる。
 さわり心地や質感もリンゴそのものです。 けど、よく出来たフィギュアかもしれません。

 ――匂いを嗅いでみる。
 うーん、リンゴの甘酸っぱい香りがします。
 けど、それだって人工でつけてあるのかも。

 ――食べてみる。
 食べてみると、リンゴというよりは桃のような味がしてビックリ。
 これって、本当にリンゴ??

 まあ、それが本当にリンゴかどうかはさておき、結局は自分たちは、体に備わっている触覚をもって、リンゴがそこにあることを認識するしかないわけです。
 そこにあるリンゴの本質を、本当の意味で分かっているわけじゃないんですね。
 光の反射を利用してものを見たり、空気の振動を利用して音を聞いたり、指先に集まる神経を伝わる信号により、ものに触れていると確認したり。
 これって全部、間接的な認識手段でしかないのです。

 なんで自分が突然こんな話をしだしたかというと、実は単純に思い出したからなんですよ。
 十年以上前に読んだ【幾千の物語】">小説に、書いてあったんです。そんな内容が。
 といってももう、うろ覚えなんですけどね。
 確かこんなことを書いてあったような気が……という程度の儚い記憶です。

 実際に起こったわけではない、フィクションの出来事。
 物語の、ほんの一節。
 けれど、それは私にとって、下手な事実よりもよほど真実だったりします。
 たとえば今日食った飯のことは、近い将来私はきっと忘れてしまうことでしょう。
 けれど、けれどたとえどんなにうろ覚えでも、あの日出会ったこの物語のことを、記憶からなくしてしまうことはないと思うのです。

 実際には存在しないリンゴのような、物語。

 それが私の始まりの物語

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Posted by 千歳 at 2003年10月27日 16:44 EDIT
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